初めに
これから書く内容は私なりの考えで、他材質のエンクロージャーや方式を否定するものではありません。
オーディオを愛される皆様それぞれに価値観が有り、良い音も異なる事は理解しております。
<エンクロージャーの変形>
まず下記の様に、目標とする既成の超ハイエンドのスピーカーの部分モデルをザックリと作成し強度解析を行った。
当然の結果ですが内部に一定の圧が負荷されると、面積の広い面ほど影響を受ける。一般的なスピーカーの 形状からすると、上下面<前後面<側面 の関係になる事は容易に想像できます。
もし、木製スピーカーで箱鳴りを期待するのであれば、側面板が最も音質に影響を与えると思います。
参考モデルは金属製ですが補強も緻密に計算して入れている事がわかりました。
特に注目したのがフロントバッフルで、この部分はユニット切り欠きで細くなっている事も有り、意外と変形し 影響を受ける事です。
<コンセプト>
再生音源の波形を歪無くスピーカーコーンに伝え、空気の振動に正確に変換する事
音場の復元については、いろいろご意見も有るかと思いますのでここでは触れません。 スピーカーとして入力信号を正しく再生する事に着目し、モデル検証の結果も踏まえ以下の簡易モデルから 上記を達成出来る構造を考えます。
①フロントバッフルは空間に対し停止させる ②各面からの音漏れを抑える
①フロントバッフルは空間に対し停止させる
フロントバッフルが振動した場合、僅かでもバッフル面が振動すれば音が出るはずで、この音は本来のスピーカー ユニットからの音と干渉し影響するはずです。また、ユニット自体が一緒に振動すれば、空間に放たれる音もそれ自体が歪を伴います。 もし、高度なテクニックが有り、この二つの音をいい音色に変換出来るのであれば話は別ですが万人受けする音色は... また、本質的に入力に対する出力は別物になります。 私的にはフロントバッフルは剛性と質量を持った物とし、振動させず不要な音は出さない方が良いと考えました。 もちろん、バスレフ方式の場合は相互の干渉、位相差というものが生じる事は承知しております。
②各面からの音漏れを最小にする
日本の住宅事情を考えれば、生活スペースを犠牲にしてスピーカーと壁の距離を十分に確保されている方は少ないと 思います。
そこで、下記の様にリスニング環境で考えてみました。
まず、背面や側面から漏れ出る音は透過して、お隣の部屋に漏れ出て迷惑になるかもしれません。また、一部は室内を 複雑に反射してユニットコーンからの直接音と干渉し、リスナーは干渉し歪、定位感を失った音を聞く事になると思います。 システム導入後にルームチューニングすれば、これらを解消出来るかもしれませんが要する時間や費用など考えると、この 様なエンクロージャーの周囲に出る音を遮断してしまう方がメリットが多いのでは?と考えました。ちなみに遮音の性能として透過損失を考えると透過損失 = 20log10(f・m) – 43の関係式となる。ここでfは周波数であるから物理的に低音ほど、音が外に出る事になる。計算してみると100%の遮音は比重の大きい鉄でも無理である事は明白です。しかし、木材比重が0.3~1、鉄7.85とすると比重差が透過損失に与える影響は大きく、音質も明確に差が出るはずです。
<エンクロージャの材質>
エンクロージャーの材質については、各面から漏れ出る音を抑える為、剛性と比重の高い金属製にする事にします。
鉄、SUS、アルミ、真鍮、銅について考察してみます。
鉄
比重、剛性も有り、その他の材料より安価に入手できます。また加工性もいいです。デメリットは強磁性材である 為、強力なマグネットを使用したユニットにより磁化される可能性が有りますが、鉄で覆うという事は電気的なシールド 効果も期待できます。また、磁力は距離の二乗に反比例しますので、設計次第ではこれ以上いい物は無いと思います。
SUS
比重、剛性も有りますが、鉄に比べ材料が数倍高くなります。材料に粘りが有り十分な冷却機能が無い私のCNC 機械ですと、加工は難しいです。ツールも高価で加工費がかかります。 磁性を有する物と無い物が有る。
アルミ
鉄より比重が小さい。剛性は高価なジュラルミンであれば鉄相当になるが一般構造材は鉄より劣る。鉄に比べ材料が数倍高くなります。加工は容易。磁性は無い。
真鍮 銅
材料が非常に高価な為、部分的に利用する事は可能だが全体を構成するには適していない。
以上より、SUS、アルミ、真鍮、銅でスピーカーを製作する事は、10万ちょっとで製作を考える私としては現実的でないと感じました。 金属製のスピーカーを普及するには、磁性と重量の問題だけなので、鉄を主材料とする事が適していると個人的には思います。 もちろん、外注依頼すればどんな材料でも、どんな物でも製作は出来ますが。。。
<密閉式かバスレフ式か?>
上図はMarkaudio CHR-120のバスレフ、密閉におけるシミュレーション結果です。(sped使用)
先の検討からも密閉式にしたいのですが、100Hz近傍から落ちているので、低音不足を感じるかもしれません。 バスレフの方が50Hzまで気持ち良く伸びており理想的です。 こればかりは聞いてみないとわからない部分なので、基本はいずれにも変更出来る仕様にしたいと思います。 また、ポート設置位置はフロントバッフルで探求してみます。
<鉄製エンクロージャのまとめ>
主材料を鉄とする事で、以下の特徴を持ったオリジナルスピ―カーを開発する。
・フロントバッフルに剛性が有り、不要な空気の振動を面から発生しない事で音がユニットからのみ再生される。またスピ―カーコーン振動を正確に空気に伝える。これにより輪郭の明瞭な、スピード感と定位の有る音を実現する。
・スピーカーコーン、及びポート以外から発生する、不要音の周囲拡散を低減し歪の少ない音をリスナー側にダイレクトに 届ける事で、反射音等による影響を軽減し、また、設置環境の依存度を低減する。
・エンクロージャー本体の重量によりスピーカーユニットが動くことが無いので、アタック音など音圧を伴う様な音も、より正確に再生する。
・金属製の特徴を持ったエンクロージャーを低価格で実現する。 (もちろん特注でSUS、アルミ製等も製作は可能です。)
・ウサギ小屋とも言われる日本住宅事情でも、音楽を楽しめるシステムを提供する。